ぶらパチ図書館
散歩写真の創始者?!、丹野清志「散歩写真入門」
Coutesy of Sunnyday Ketchup
2003 年10月29日
2006年9月2日改定


 丹野清志著、「散歩写真入
門」、ナツメ社、1992年刊。
Yahooオークションで500円
くらいで2003年7月に購入。


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 丹野清志著、「コンパクトカメラ
撮影辞典」、ナツメ社。数年前に
新刊で購入。撮影辞典と銘打っ
ているが、あまり辞典という雰囲
気ではない。むしろ、散歩写真
のカメラ選びや、その撮りかたを
語った読み物として役立った。


 ぶらパチ・散歩写真の基本は、町を歩き、都市を眺め、気に入ったものを撮影すること。あまり難し く考えないで、自分にとって楽しいことを継続していきたいと思っています。一方で、写真に真剣に取り組んでいるプロの仕事を見たり、世界をめぐる旅の達人の観察を共有したり、都市を見つめる鋭い視点を学ぶことも忘れないようにしたいもので す。

 ぶらパチ図書館では、写真、都市、旅と いった分野で読み応えのある書物や、私好みの写真集などをぼちぼち取り上げていきたいと思います。

【散歩写真の創始者?!】
 私もサイトのタイト ルとして使っていますが、「散歩写真」という言葉があります。インターネット検索で「散歩写真」と入れると、軽く数百のサイトをヒットしますから、かなり 定着したことばのようです。すると、いつから「散歩写真」があるのか、誰が言い始めたのか、と気になります。
   
 私の知る限り、散歩写真という言葉を最初に使った人の一人は、写真家の丹野清志さんではないかと思います。うんと昔のことはともかく、国会図書館の書籍 検索サイトで調べると、1992年に丹野清志さんの著書「散歩写真入 門」(ナツメ社刊)が出ています。タイトルに「入門」としているあたりに丹野さんが本家という自覚をお持ちのようですから、一応ここでは丹野さんを散歩写 真の創始者、ということにしておきましょう。

 実は丹野さんの散歩写真入門の3 年前、1989年に福岡で、山口昭三さんという人が、「散歩写真館」という写真集を出しています。このページに「詳細はわからない」と書いておいたら、ご 本人から連絡をいただき、「散歩写真館」(葦書房)を一冊送っていただきました。山口さんの写真は、写真用でないレンズを使った、超ソフトフォーカスの写 真で、それで一つのカテゴリーになってしまうような種類の写真だと思いました。

【丹野清志の写真散歩の方法】
  丹野さんはみずからも数冊の写真集を出版されている写真家なのですが、この人の写真の手法は肩の力の抜けたものです。そのことは後で書くことにして、まず は丹野さんの散歩写真論を耳を傾けてみよう。
 温かい日が続いている。光がやわ らかい。
 そういう日は、家出ぼけっとしているのはもったいない。カメラを持って、ぶらり写真散歩にでかける。
 なんとなくシャッターを切りながら、ぶらぶら歩く。
 とりたててこういう写真を写すぞ、という大テーマがあるわけではない。行き先もその日の気分で決める。…
 ふだんなにげなく歩いて眺めている町の風景に、ひょいとカメラを向ける。と、カメラのフレームで切り取られた風景の部分が、初めて見る風景のような気分 にさせられたりする。不思議な発見をしたような気分にもなる。その度にカチリとシャッターをきる。それは、傑作と呼ばれる写真ではないのだけれど、なんだ か得したような満足感に浸る。
 つまりはぶらりと散歩に出かけて、「傑作」をモノしような んて考えずに、気ままにパチりとシャッターを切る、これが散歩写真の基本だと思います。ほら、やはり「ぶらパチ」なのですよ、散歩写真の基本は…。
 一部には、そういう写真は「レベルが低い」というような捕らえ方もあるのですが、写真に普遍的なモノサシをあてるような考え方はなんとなく窮屈で、私の 好むところではありません。写真を職業にしている丹野さんが「大テーマがあるわけではない」と言い切ることはあっぱれ。ましてはアマチュアの私なぞは、堅 苦しく考えず、気兼ねないこのぶらリ・パチりに趣味として写真の理想系を見てしまいます。
 
【散歩写真って何?
 ふだん眺めている町の風景に、ひょいとカメラを向ける。シンプルでいいですね。それでは、こう して撮られた写真をなんと呼ぶか。写真はよく、「風景写真」、「人物写真」などのカテゴリーに分けられますが、ぶらり・パチりの写真には特別な呼び方があ りません。丹野さんは続けてこう述べています。
 あなたは何写真、つまりどの分野 の写真を写しているのですか、とよく聞かれることがあります。でも、ぼくの写真はどの分野にも入らないので答えようがないのです。だって、人物がいたり、 風景だったり、時には花が写っていたりするわけで、「専門」というカッコでくくることが不可能なのです。で、いつもどう答えていいか困るので、これからは 「散歩写真」と言おうと思っています。散歩は自由です。だから写真も自由です。
 「散歩写真」には良い写真をどう写すか、といった写し方の「型」はいっさいありません。だからこれは「傑作」だとか「駄作」だという比較もありません。写真 は散歩の仕方できまるのですから、ウデの差など関係ないのです。
丹野さん、ついに写真のウデまで否定しちゃいました。
 ようするに、自分の散歩の記録のようにメモをとるように写真を撮っていけば、それが大げさにいえば自分の人生の記録になる。そういう個人的な営みとして 散歩写真を位置づけてらっしゃるのですね。これはフォトコンテスト入賞のための技術論や、構図はこうあるべし、露出はこうせねばらないといった類の写真技 術至上主義の論議とは大きく異なります。私の写真の考え方も、丹野イズムがかなり影響しているように思います。

【アマチュアの撮りつづける写真
 丹野さん の散歩写真は、とても自然体で柔軟なものです。それがこの人の写真の語り口の魅力でもあります。丹野さんには、他にも「コンパクト写真撮影辞典」という著 書があり、散歩写真のためのカメラ選びなどで参考になります。
 もとよりプロとアマには大きな力の差があるのは歴然としています。最近のアマチュア写真はともすると技術偏重ではないかと思うときがあります。大切なの は写真を撮るあなた(私)自身なのだ、とこの本は語っています。それを大切にしないで、絞りは、レンズはと凝っていっても、撮る自分のなかの気持ち、感動 をベースに置かなければ、所詮は「うまへた」(一見うまいけれど、なにも伝わらない下手写真)しか撮れない。写真を撮る視点をしっかり持って、自分なりに 撮り続けることが一番重要なのだ、と考えました。



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